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【福岡県桂川町】王塚古墳

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特別史跡

王塚古墳の石室と壁画

 

 遺体を納めた横穴式の石室は、主軸線を後円部の中心に正しく向けており、くびれ部に近い北西側を入口としています。

 前・後の二室に分かれた石室は、全長6・5メートル、後室(玄室)の長さは約4メートル、幅約3メートル、高さ約3・5メートルと大形で、石枕の数から少なくとも四体が安置されたようです。

 この石室の特徴は、奥壁に石棚を突き出させていることや後室への入口上に小窓を開けていること、また、二人用の棺床をもつ肥後系の石屋形を設置し、さらに、その前面に一対の灯明台石を立てるなど、他に類がない極めて複雑な構造をとる点にあります。

 なお、天井石をはじめとする石室の大部分には、地元産の花崗岩などが使われていますが、寝台以外の石屋形や灯明台石・石枕は阿蘇の溶岩(八女地方産か)製で、当時の各地域間における活発な交流を物語っています。

 有名な壁画の特色は、壁のほぼ全面にわたって、わが国では最多の五色(赤・黄・緑・黒・白)を用いて各種の図像を華麗に描く点にあり、その豪華さは他に例を見ないものです。

 騎馬像や盾・矢筒(靭)・刀などは、死者の世界の静けさを守るために並べ置かれた物でしょう。蕨手文や三角文が壁いっぱいに描かれて目立ちますが、大形の同心円文は意外に少なく、県南の筑後地方の壁画との違いをよく表しています。

 なお、双脚輪状文は、他に弘化谷(福岡)、釜尾・横山(熊本)の三古墳しか描かれていない極めて珍しい文様ですが、残念ながらその意味はわかっていません。

 王塚古墳の壁画は、わが国の装飾古墳の頂点の一つを極めた代表例であり、この地域の大豪族である「穂波の君」の墓とみてよいでしょう。
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道の辺の 草深百合の 花笑みに 笑みしがからに 妻といふべしや
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万葉歌読み下し文と解説

道の辺の 草深百合の 花笑みに 笑みしがからに 妻といふべしや

作者未詳(巻七ー一二五七)

 

(歌意)

道端の草藪の中に咲いている百合の花のように、私がほほ笑んだだけで、私をもうあなたの妻と言ってよいのでしょうか、困りますわ。

 

ほんの少し女性がにこっとほほ笑んだだけなのに、男性は求婚を承諾をしてくれたと思った。そこで女性はたしなめた。

別の解釈として「笑まししからに」と詠んで、「あの子ががちょっとほほ笑んだからといって、もう妻といってよいだろうか」と、男性が自問自答したとの説を取る解釈もある。いずれにしても「草深百合」の言葉は、万葉人の造語力の豊かさを物語っている。

揮毫者犬飼孝(一九〇七~一九九八)は文化功労者大阪大学甲南女子大学名誉教授。『万葉集』の風土文芸学的研究をおこない、全国約千二百ヶ所の万葉故地を踏査し、それらの保存運動にも尽力した。

嘉穂郡(明治二十九年に嘉麻・穂波両郡合併)の地にも、生前たびたび訪れた。

 古代地名の嘉摩郡である旧、嘉穂郡稲築町鴨生(現、嘉麻市鴨生)には、平成七年に犬養揮毫による山上憶良万葉歌碑が二基建立されている。

 他に古代地名嘉摩郡には多数の万葉歌碑が建立されているが、古代地名の穂波郡にはこれまで一基も万葉歌碑は建立されていない。

「嘉麻万葉を学ぶ会」が建立する第三基目の万葉歌碑は、古代地名穂波郡を念願していたところ、装飾豊かな王塚古墳は古代人の息吹を伝える『万葉集』に通じるものがあるとして、桂川町桂川町議会に歌碑建立のご理解をいただいた。

快く受け入れられ、まさしく穂波郡の地に建立実現の運びとなった。

揮毫万葉歌は、昭和二十四年に師弟で選んだ「万葉百首歌」のなかの一首である。犬養孝の生誕百年を記念する年度に、建立が実現したことは喜ばしい。

(『万葉集』に多くの歌を残した山上憶良は、七三〇年前後、太宰府と嘉麻の往還の折、この古墳の傍らの古代官道を通ったと伝えられている)
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王塚古墳ゆかりの石碑等

現在の王塚古墳は、平成5年に保存修理工事が完成しました。ここに設置しているのは、王塚古墳が保存整備される以前の旧保存施設の整備のために、地元の住民の方が寄付された時の記念碑と石柱、手水鉢です。

また右側に積まれている石は、古墳の墳丘の斜面におかれた葺石です。この下に、王塚古墳の石室の閉塞石を保管しています。

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王塚古墳
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石室公開日にのみ石室を見られる

 

古墳名 王塚古墳
住所 福岡県嘉穂郡桂川町大字寿命376
築造年代 6世紀
型式  
大きさ 石室(全長6・5m)、後室(長さ約4m、幅約3m、高さ約3・5m)
石室 横穴式石室
駐車場 有 
備考