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【佐賀県神埼市】脊振神社 上宮

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霊峰背振山

 

 背振山(せふりさん)は、佐賀県と福岡県の県境に位置する標高1055m、背振山系最高峰の山で、山頂には、航空自衛隊のレーダー基地があります。

 天気がよければ、遠く有明海の彼方に雲仙岳も望め、峰沿いに走る九州自然歩道には、登山やハイキングを楽しむ人々でいつも賑わっています。また、東側に向けて開けているので、日の出を見るのには絶好の地理的条件を備えています。

 古くは多くの修行僧が暮らしていた霊山としての歴史もあり、現在でもその痕跡が多数残っています。また、禅僧栄西が中国よりお茶の種を持ち帰りこの地で栽培したことから、日本のお茶の発祥の地ともいわれています。


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背振山山岳信仰遺跡

 背振山は、上宮ヶ岳・弁財天岳・背布利山・世布利山・茶降山・千振山・ソホル山などとも呼ばれていました。古くより信仰の対象とされた山で、その名の起こりについて様々な伝説が伝えられています。

 玄界灘から見える最も高い山である背振山は、博多湾に入港する船の目印となり、古くから信仰を集めていました。遣唐使随行した空海最澄・円仁・円珍平安時代に二度宋へ渡った栄西など多くの人々が入山して航海の安全を祈願したと伝えられます。

 背振山に関する史料としては、『日本三大実録』貞観十二年(870)の条に、筑前国正六位上の背布利神が従五位下に昇叙された記事があり、その信仰の古さがうかがえます。平安時代から鎌倉時代にかけては、英彦山求菩提山などと共に北部九州における山岳仏教の一大拠点として栄え、上宮の東門寺中宮霊山寺、下宮の積翠寺(現在の修学院)を中心に、最盛期には「背振千坊・嶽万坊」と呼ばれ、九州一の大伽藍であったと伝えられています。その範囲は背振山を取り巻く広大なもので、佐賀県側の肥前国だけでなく、福岡県側の筑前国をも含んでいました。

 上宮の東門寺は、現在は残っていませんが、山頂近くには修験道の開祖として信仰される「役行者」の石像が残っています。また昭和六一年に山頂の航空自衛隊基地内で土砂崩れが発生した際、銅製の経筒が発見されました。発掘調査の結果、平安時代から中世のかけての経塚や火葬墓が多数発見され、当時の様子をうかがうことができます。

 背振山岳信仰遺跡は、まだ詳細な調査が行われておらず、不明な点が多い状況ですが、山中には数多くの僧坊や修行場などの痕跡が分布していると考えられます。
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背振山

 

 背振山系の最高峰、標高1054.6mあり、「背振」の名の由来は上空で「龍が背を振った」ということから名づけられたと伝えられている。(名前の由来は諸説あり)古くから山岳信仰霊場として繁栄し、山頂一帯には弁財天を祭る石宝殿や多くの石像物・僧坊跡が見られる。現在も信仰の山として崇敬され多くの方が訪れる。
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役行者

 

 「役行者」とは、飛鳥時代から奈良時代(7~8世紀)に奈良を中心に活動していたと考えられる呪術者で、「役小角(えんのおづぬ)」がその本名と伝えられている人物です。大和国葛城上郡(現在の奈良県御所市)に生まれ、葛城山で修行を行った後、熊野や大峯等の山々で修行を重ね、修験道の基礎を築いたと伝えられます。「役行者」にまつわる伝説は多く残されており、不思議な力を駆使して空や野山を駆け巡り、鬼神を自在に操ったとされています。中世以降に国内では修験者の活動が盛んになり、その中で「役行者」は、数々の不思議な業績を残した偉大な修行者とされ、「修験道の開祖」として崇められるようになりました。

 背振山は、平安時代以降に北部九州における山岳仏教の一大拠点となり、山頂付近には上宮東門寺があったと伝えられ、「背振千坊」といわれるほど栄えていました。

 背振山の「役行者」像は、基礎や台座を含めた大きさが182㎝で、岩坐に腰掛け、左足を降ろし、右足は胡座上に組んでいます。頭は兜巾を被り、肩には蓑をまとっています。台座には各面に銘文が刻まれており、それによると、江戸時代の元禄十三年(1700)に背振山の山伏等により建立されたことがわかります。

 この「役行者」像は、背振山の歴史や修験道の様子をうかがえる貴重な資料といえます。
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役行者
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佐賀県神埼市の背振神社上宮
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本殿
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自衛隊レーダー基地
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