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【福岡県那珂川市】丸ノ口古墳

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福岡県那珂川市の丸ノ口古墳
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那珂川市の文化財

 

 ここ那珂川市は、博多と佐賀県神埼を、そして糸島と太宰府を結ぶ道が交わる場所として古くから栄えたところで、市内には数多くの文化財が残されています。市の中心を流れる那珂川と、支流の梶原川によってつくられた平地には、縄文時代から中世にかけて人々が生活した集落の跡が広がっています。また平地を見下ろす丘の上には前方後円墳をはじめ、500基ほどの古墳が見つかっており、その南にそびえる山々には中世から近世にかけての山城が多数築かれています。また、巨木などの天然記念物や様々な祭りも随所に残され、この地が永い歴史の流れの中で、大切な役割を果たしてきたことを物語っています。
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丸ノ口古墳群

 丸ノ口古墳群は60基ほどの古墳が集まってできており、この場所から見える林の中にはまだ多くの古墳が眠っています。中学校建築に伴ってその内の42基の古墳を発掘調査したところ、円墳という丸い形をした古墳と、それら円墳の間につくられた小さな石室だけの古墳が見つかりました。これらの古墳からは、イヤリングなどの「装身具」、矢じりや刀などの「武器」、馬につけた「馬具」のほか、たくさんの土器が出土しており、それらの出土品からこの古墳群は6世紀代につくられたことがわかりました。

この時期の古墳は、下の写真でもわかるように、いくつかのグループ(群)に分かれて集中してつくられているのが特徴で、群集墳と呼ばれています。
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丸ノ口古墳群の装飾

 装飾古墳とは、古墳の石室や石棺などに文様が描かれた古墳のことです。古墳の装飾は、外から見えない内部に行われるため、死者の霊を鎮めるために描かれたと言われています。文様をつける方法には赤や青などの絵の具を使う彩色系のものと、線を刻んだり文様を浮彫りにする彫刻系に大きく分かれます。丸ノ口古墳群の装飾は、石の表面を突くように叩いて浅く窪ませ文様を表現する彫刻系の装飾で、技法としては珍しいものです。この技法で装飾を行っている古墳は、下の分布図に示すとおり筑後地方などで数例しか発見されていません。当時の那珂川市と筑後地方のつながりを示す貴重な発見となりました。
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丸ノ口古墳群Ⅳ群2号墳

 直径約12mの円墳で、6世紀の後半につくられた古墳です。盛土の東側はすでに削られていましたが、調査の結果、石室の壁に直径約30㎝の「同心円文」と、「舟」や「波」を表したと思われる文様が描かれていることがわかりました。
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丸ノ口古墳群Ⅴ群9号墳

 はっきりとした盛土のない古墳で、石室も長さが約2.4mと、他の古墳に比べると小形です。出土品がないため、いつ頃つくられたかは不明ですが、下の写真からもわかるように、古墳と古墳の間につくられており、他の古墳と同じ時期ではないかと思われます。
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丸ノ口古墳群Ⅴ群5号墳

 直径約14mの円墳で、6世紀の後半につくられた古墳です。石室の天井部分は削られてなくなっていましたが、石室の奥の壁に直径が約30㎝の「円文」が三つ描かれていました。
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丸ノ口古墳群Ⅴ群8号墳

 古墳の上部が削られていましたが、直径が約8mの円墳と思われます。石室の形態が古く、他の古墳と違いはっきりとした入口を持たないものでした。この写真からもわかるように、隣の古墳に入る墓道がこの古墳を迂回してつくられています。このことからもこの古墳が先に造られたことがわかります。出土した土器から、本古墳群の中では最も古い6世紀の前半につくられました。
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